株式会社丸信

三方よし通信

三方よし通信

【印刷コラム】摩訶不思議、インキ濃度

最近、現場の作業者と営業から質問を受けたので「インキ濃度」について書きます。

オペレーター「この印刷物、墨を盛っても盛っても 前回ほど黒くなりません。どうしましょうか?」

拡大して確認すると金色インキの上に墨が乗っています。墨から金色がところどころ透けています。操作パネルの墨の出し量を見ると、MAX近くまでインキを盛っています。

私「印圧を下げて、墨の濃度を下げて、水を絞って」

オペレーター「え?!墨を濃くしたいんですよ?!」

私「大丈夫だよ!やってみて!」

印刷オペレーターは恐る恐る指示に従います。 その結果…

オペレーター「墨が濃くなりました!!!」

1.上の色のインキのパサツキを抑えるために印圧を上げると、隙間がなくなり、下のインキが見えなくなり濃くなります。

2.濃度を上げると、色そのものの膜圧が上がるので濃くなります。(2 の場合、水を多く出さないとインキ汚れが発生します。

1は、それぞれ濃くする為のやり方ですが、これを同時にやってしまうと色が薄くなるんです。

①印圧を上げる⇒紙と版(正確にはブランケットというローラーから転写します)の隙間が狭くなり、インキを供給する絶対量に制限がかかります。
②濃度を上げると、水を多く出さなければならないので、乳化(インキに水が混ざる)が進みインキが薄くなります。

つまり、「印圧を下げて、墨の濃度を下げて、水を絞って」は【インキを供給できるスペースを作り、水の量を少なくしたいからインキの濃度を下げて】という指示でした。

同じように、「濃い黒を出すのに、カラー4色【C(藍)、M(紅)、Y(黄)、K(墨)】を全部100%にするのは、何故だめなんですか?」という質問を営業の方から受けたことがあります。

結論としては、色が薄くなり、色がブレやすくなります。また乾燥不良のリスクも増加するのです。

一番影響の強い色は、【C(藍)、M(紅)、Y(黄)、K(墨)】 のうち、K(墨)です。黒を濃くしたい場合、「墨をベースに他の色は少し少なめにバランス良く」が一番濃く見えます。

このような配分で作られた黒を”リッチブラック”といいます(高級な感じです)。 他に、墨の2版がけという方法もあります。

ただし、墨は一定以上濃度を上げても見た目が変わらないので、墨1版で厚盛りでもあまり変わりがなかったりします。インクは乗せ合わせをし過ぎると、隙間がなくなり色が乗らなくなる特性があります。

ちょっとしか紙側にインクが残らずに、ブランケットや版にインキが戻ってしまいます。その為、転写が不安定になり、ムラが発生します。

何事も腹8分が大事だなと思います。

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