株式会社丸信

三方よし通信

三方よし通信

【社長コラム】賃上げ

年明けから大企業を中心に賃上げ気運が高まってきました。ユニクロやサントリーなどが大幅な賃上げを発表しています。悲しいことに、この約30年間、主要国では日本のみが賃金が増えることなく、今やG7では最低、OECD加盟国でも平均を大きく下回り、下位にランクされています。

この原因はデフレと言われてきました。(ドルベースなので円安の影響もあります)昨年、全世界で物価は急上昇しました。まだ日本では3%台と緩やかです。それでもこの30年には見られなかったインフレです。内訳をみると企業間取引の物価は確実に上がっているのに、未だに消費者向けの物価はかなり抑えられています。これは消費者における年金受給者の割合が高まっているからだという見方があります。 GDPの約60%を占める個人消費 。その個人消費を牽引してきた 「団塊の世代」もいよいよ75歳以上の後期高齢者になります。人口のボリュームゾーンが年金受給者になり、消費意欲も減退していく、2025年から景気がさらに悪化すると予測されてきたのは、これに起因します。

しかし、このインフレの機会を逃がすまいと政府は企業に、あの手この手で賃上げをせまっています。最低賃金上げ、税制、補助金の採択率向上とセット、これまで同様の施策が打たれることでしょう。

賃上げ→適正な範囲のインフレ→企業業績向上→さらに賃上げというサイクルが回り始めれば経済は浮揚するはずです。これには各企業が収益性を高められるかが最大の鍵になります。営業や製造の現場だけでなく間接部門もDX等で生産性を高めなければ、従業員の昇給の原資が生まれません。弊社としてもなんとか生産性を上げるべく踠いている最中です。それでも 「生産性が上がったら賃上げする」 という順番では離職者が増えたり、採用に苦戦したりとマイナス面が色濃くでそうです。先に歯を食いしばって賃上げを実施し、従業員さんの協力をとりつけて生産性を上げる、こんな順番を取らざるを得ない状況だと感じています。

これからも労働市場にはより少ない数の若者しか出てきません。それを大企業やお役所と競争しながら採用しなければならないのです。しかも東京への一極集中は加速するばかりですから、地方はより深刻な事態となるのは確実です。

賃上げをコストの上昇と捉えては、いつまでも前に進めません。賃上げ=経営の目的の一つと考えなければ、生き残れない時代が来たのだと感じています。少なくともインフレ相当の3%の賃上げが必要なのかも知れません。言うは易し。人口減という構造的問題に加え、戦争などが起こり、先行き不透明なこの時代にとても勇気が要る経営判断だと思う次第です。